SLAP it Project vol.5 小野環「百蝙蝠」

2025. 03. 18 / News

 Main Visual of the Tamaki Ono Exhibition One-Hundred Bats(Setouchi L-Art Project)

 

 Setouchi L-Art Project(SLAP)は、第5回アーティスト招聘プロジェクトとして、広島県尾道市在住のアーティスト、小野環氏による個展「百蝙蝠」をiti SETOUCHIで開催します。

小野は、20年以上にわたり尾道を活動拠点としてきました。アートを通じた地域資源の再考・再生を主眼に置き、作品制作をはじめ、AIR(アーティスト・イン・レジデンス)や空き家再生などのプロジェクトに取り組んでいます。「百蝙蝠」と題した本展では、福山市出身の建築家・武田五一が策定に携わった、福山市の市章に着目します。

 築城400年の歴史を誇る福山市のシンボル・福山城は、かつて「蝙蝠山(こうもりやま)」と呼ばれた地に建てられました。「蝠」は「福」に通じることから「福山」と名付けられ、市章の由来にもなっています。武田が選定した蝙蝠山のデザインは、100年以上にわたり福山市を象徴するマークとして受け継がれています。

 小野は、展示会場となるiti SETOUCHIの壁や柱、天井、吹き抜けなど、普段注視することのない建物のさまざまな場所に市章の「こうもりマーク」を配します。また、そのマークを施した様子を記録した写真をコワーキングスペース tovioで展示し、小野が収集した市章の映り込んだ古写真も併せて公開します。来場者は、館内に潜むこうもりマークを探索する過程で、自ずと建物の構造や来歴に目を向けることになります。

 第二次世界大戦末期の空襲で壊滅的な被害を受けた福山は、戦後の復興を経て、今日の駅前再生事業に至るまで、時代とともに絶えず変化を遂げてきました。展示会場となる建物もまた、1992年に百貨店として開業し、複数の事業者の手を経ながら再生を繰り返してきました。

 現在のiti SETOUCHIは、2022年のリノベーションによって、百貨店の面影を残しつつ新たな空間へと生まれ変わりました。設計に際しては、既存の構造や地域産業を反映した素材を活かし、施設には都市が辿ってきた歴史を語る痕跡が多く残されています。本展では、福山市の市章というモチーフを起点にして、空間の知覚のあり方や都市の変遷を見つめ直す機会となるでしょう。

SLAP総合ディレクター 菅亮平

 

展覧会概要

会 期|2025419日(土)~ 202597日(日)
時 間|10:00-21:00(コワーキングスペースtovio18:30まで)
会 場|iti SETOUCHI
住 所|広島県福山市西町1-1-1 エフピコ RiM 1F
入場料|無料 / tovio 内の展示のみ観覧料550円(税込)
    各種イベントは有料
主 催|Setouchi L-Art ProjectSLAP
助 成|公益財団法人エネルギア文化・スポーツ振興財団
協 力|NPO法人尾道空き家再生プロジェクト
    福山電業株式会社
後 援|福山市、エフエムふくやま

 

招聘アーティストのご紹介

Photo of 小野環
ⓒ人と尾道
小野 環|Tamaki Ono
1973年北海道函館市生まれ。1998年東京藝術大学大学院美術研究科修士課程絵画(油画)専攻修了。絵画とインスタレーションを軸に、日常の事物や場所の来歴に注目した作品を制作。並行して、アーティスト・イン・レジデンスの運営や空き家再生活動を起点に、様々な領域の専門家とコラボレーションしつつ活動を展開。2021年に第24回岡本太郎現代芸術賞特別賞を受賞。近年の主な展覧会に「複数形の世界のはじまりに」(東京都美術館、2018)、「Re-edit再編」(個展、光明寺會舘、2022)がある。キュレーションに「NEW LANDSKAP シュシ・スライマン展」(尾道市立美術館ほか、2023年)、「未完の和作」(小林和作旧居、2024年)などがある。現在、尾道市立大学芸術文化学部美術学科教授、AIR Onomichi実行委員会代表、NPO法人尾道空き家再生プロジェクト副代表理事。

 

Photo of the Ono's Artwork
《豊かな生活》 アトリエドラゴン   2004年

 

Photo of the Ono's Artwork
《Image Circle》 2003年

 

Photo of the Ono's Artwork
《再編街》 百科事典、美術全集など   2021年

 

Photo of the 小野環's Artwork
《再編スタンダード  のぞみが浜住宅》 百科事典   2022年

 

Photo of the 小野環's Artwork
《再編層36》 パネル、油彩   2021年

 

Photo of the 小野環's Artwork
《再編・整頓・混沌》『原色日本の美術 第31巻 近代の洋画』2015年

 

観覧にあたってのお願い

コワーキングスペースtovio内の作品鑑賞は、通常利用者に配慮した鑑賞をお願いいたします。
コワーキングスペースtovioではさまざまなイベントが不定期で開催されており、貸し切りイベント開催中は館内への入場が制限される場合がございます。会期中の会場情報についてはSLAPのInstagram、もしくはtovioのInstagramをご確認ください。

 


イベントプログラム

01 |トークイベント「百の試み」

小野環氏がこれまで行ってきた100の実践について紹介するとともに、今回のプロジェクトの構想に至った経緯を語ります。

日時|2025年4月26日(土)17:00-19:00

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02|街歩きツアー「こうもり山にいってみよう

小野環氏を講師に迎え、iti SETOUCHIの内部を一緒に探索したのち、古地図を片手に蝙蝠山(福山城)を訪れます。

開催|2025年5月31日(土)14:00-16:30

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03|トークイベント「福山の市章と武田五一」

福山市の市章の選定に携わった建築家・武田五一を研究してきた谷藤史彦氏を招いて、本展の主題とアプローチについて議論を行います。

登壇|小野環(SLAP招聘アーティスト)、谷藤史彦(下瀬美術館前副館長)
司会|菅亮平(美術作家 / SLAP総合ディレクター)
開催|2025年7月5日(土)
時間|17:00-19:00
場所|コワーキングスペースtovio
参加|1,000円(税込)

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04|ワークショップ「小さな家」

小野環氏を講師に迎え、小さな家の模型を制作してiti SETOUCHI内に設置し、新しい街の姿を考えます。

講師|小野環(SLAP招聘アーティスト)
開催|2025年8月2日(土)
対象|小学生以上
時間|14:00-16:30
場所|iti SETOUCHI
参加|500円(税込)

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関連イベント

尾道建築塾 たてもの探訪編 「失建築」

尾道駅周辺のかつての建築群の跡地をめぐり、街の代謝の中で失われた建物に想いを馳せます。

講師|小野環、真野洋介(東京科学大学教授)
開催|2025年5月18日(日)
時間|14:00-16:00
場所|尾道市旧市街

※ 詳細、お申し込みはNPO法人尾道空き家再生プロジェクトのウェブサイトをご確認ください。